‘Moving in the Dark’: Hamas Documents Show Tunnel Battle Strategy
ハマスの地下戦闘ハンドブックには、ガザ地区の地下を暗闇の中でこっそり移動し、狭く限られた空間でオートマチック銃(訳注:次の弾が自動的に装塡〈そうてん〉され、弾薬がある限り連射が可能)を発射して殺傷能力を最大限発揮する方法が、事細かに記されている。
戦場の指揮官たちには、戦闘員が地下のさまざまな地点間を移動するのにかかる時間を秒単位で計れ、という指示すら出ていた。
イスラエル軍が押収し、ニューヨーク・タイムズ(NYT)が目を通した2019年のマニュアルからは、2023年10月7日の攻撃から始まったイスラエルとの現在の戦争のはるか以前から、ハマスが長年、準備を重ねてきたことがうかがえる。攻撃に長時間耐えることができ、暗いトンネル内でイスラエル地上部隊の動きを鈍らせる、地下軍事作戦の構築に向けて。
イスラエルを攻撃するちょうど1年前、ガザ地区のハマスの指導者ヤヒヤ・シンワル氏は、トンネル網を空爆や地上攻撃から守るため、防爆扉[blast doors]設置に22万5000ドルを支出することを承認した。
承認文書によると、ハマスの旅団司令官たちはガザ地下のトンネルを精査し、要塞(ようさい)のように防備を固める必要のある、地下と地上の重要地点を特定したという。
これらの記録類に、専門家やイスラエル軍司令官への取材を加えると、なぜイスラエルが戦争開始から1年近くもハマス制圧に苦労しているのか、その理由を説明するのに役立つ。
地下トンネルは、ハマスがイスラエルに潜入して攻撃を仕掛けるのに使われる可能性がある。このため、イスラエル当局は何年も、トンネルを探し出しては破壊してきた。とはいえ、ガザ内部の地下トンネル網の全容把握は優先事項ではなかった、とイスラエル高官は語った。侵入や全面戦争はあまり想定されていなかったのだ。
その一方、今となってはイスラエル側も悟った通り、ハマスはまさにそのような対決に備えていた。
- 【注目記事を翻訳】連載「NYTから読み解く世界」
NYTの取材によると、ハマスの指導者たちは、何年もかけて地下戦計画を練ってきたとみられます。マニュアルや手紙など、入手した文書類に基づいて詳報しています。
もしトンネルがなかったなら…